ということで、いよいよ僕が書きたいと思っていた内容、法学部履修の手引きです。
今週のお題が「新生活が捗る逸品」だったので、いよいよ踏ん切りをつけました。もちろんこの「逸品」とは「東京大学法学部便覧」です。すでに熟読している方も、まだ全く読んだことのない人も、これを機に読んでいただきたいです。すでに新学期が始まって少し経ってしまっていて、今更感が強いですが。
なお、この記事のほとんどは、便覧その他をよく読めばわかることをただまとめただけのものです。詳細については、最新版の便覧をご自身で参照することを強くおすすめします。
ただし、個人的に法学部教務課に確認した情報もあるので、その点は結構自信があります。
根拠条文については、僕がパッと分かるもののみ載せています(網羅するのはめんどくさかった)。また、各類の必修がどうなっているのか、というような基本情報はあえて書きません。学部便覧の他、卒業要件についてが分かりやすいと思うので、そちらをご参照ください。その他の参考文書も適宜リンクを貼っています。
参考:2020年度法学部便覧
履修単位数の上限について
卒業に必要なのは80単位(学部規則10条)。
他学部に属する科目は、随意科目として10単位まで卒業単位に算入できる(同9,10条)。
各セメスターの履修上限は24単位(履修上限規則1条)、ただし2年生だけはS・Aセメスターの1年間合計で34単位(同2条)。履修したが落とした必修科目について、翌年度以降に当該科目を再び履修する場合、10単位までは24単位上限と別に取得できる(同3条)。
履修上限を超えた科目については、履修の届出時に「履修を認めない」という扱いになり、学生が自分で削除することになる(同5条1,2,3項)。
留学や早期卒業を予定する場合は、各セメスターの履修上限が30単位になる。ただし、途中で留学や早期卒業を取りやめた場合は、24単位上限の超過分について単位が認定されなくなる(同5条4項、早期卒業制度規則3条、4条2項)。
3年時以降に通年開講の科目を履修する場合、その科目で最終的に取得する単位は、その科目を履修するセメスターの単位として算入するので、上限を超過しないように注意する必要がある(例:刑法第1部なら、4単位をSセメスター分の単位として算入するため、残りの履修可能な単位数は20単位)(根拠条文なし、法学部教務課に確認済)。
3年時以降の履修上限は他学部に属する科目の単位を(おそらく)含む。2年時の履修上限には他学部に属する科目を含まない(例:「教育と社会」などの教育学部開講の教職課程向け持出科目。以下画像の通り、34単位を超えているが正常に単位認定されている)(根拠条文なし、2年時の持出については法学部教務課に確認済)。
ポイント
(少なくとも)2年時だけは他学部履修がかなり自由にできるというのは結構マニアックな情報ではないでしょうか。早期卒業などを考えている人にとっては、早くから単位をたくさん取得できるので、特におすすめの履修方法です。
また、3年時以降に通年科目を履修しようとする人(3類から1類に転類した関係で刑法第1部が必修になった場合など)は、どちらのセメスターで上限に引っかかるのかに注意してください。
早期卒業について
早期卒業のためには、申請時点で、①2年時で26単位以上取得していること、②法学部専門科目において優以上が履修単位数の5割以上又はGPAが3.3以上であること、③教養学部前期課程のGPAが3.2以上であること、が必要(詳しくは早期卒業制度規則2条以下)。
②には他学部に属する科目の成績を算入することが可能(同12条1,2項)。これにより、他学部に属する科目をうまく活用すれば、早期卒業のハードルを多少下げられる可能性がある。
法科大学院進学プログラムを使いつつ(=成績によっては法科大学院の選抜試験を受けることなく)3年間で法科大学院に進学したい人は、早期卒業制度を合わせて利用する必要がある(詳しくは進学プログラム履修規程、「法曹コース」(法科大学院進学プログラム)について)。
ポイント
早期卒業を考える場合、「2年時で26単位以上取得していること」は意外と重要です。成績の良し悪しは後で挽回できますが、こればかりは後からではどうしようもないので気をつけましょう。同じ理由で、前期課程の成績にも注意です。
しかし、東大はGPAの確認が難しい(優上4.3・優4・良3・可2・不可0で計算するが、特に前期課程はこれをわざわざ自分で計算しないといけない)ので、GPA要件は鬱陶しいですね。
成績優秀者表彰などについて
共通科目(憲法、民法第1部、政治学)14単位と実定法系科目又は政治系科目40単位の計54単位以上のうち、5割以上が優以上なら「主領域優秀」、2/3以上が優以上なら「主領域最優秀」と認定される(成績優秀者表彰規則3条以下)。
実定法系科目・政治系科目・基礎法学系科目・経済系科目のうち、主領域に属する科目以外の22単位のうち、5割以上が優以上なら「副領域優秀」、2/3以上が優以上なら「副領域最優秀」と認定される(同4条以下)。
ただし、基礎法学系科目を14単位以上取得している場合、主領域にも基礎法学系科目にも属しない単位を基礎法学系科目とみなして副領域表彰に用いてよいとする特則がある(同5条以下)。
主領域、副領域がいずれも最優秀として表彰されると、「卓越」と認定される(同6条)。
なお、成績優秀者表彰規則2条には「法学部で開講される全ての科目を……いずれかに分類する」と書いてあるが、これに演習とリサーチペイパーは含まれない(授業科目は一学期一覧表を見ると、科目分類が空欄になっているのが根拠。法学部教務課にも確認済)。
一覧表にない特別講義については、毎年科目分類が別途発表される(特別講義の科目分類)。
その他認定を受けられる制度として、法学部には「公共法務プログラム」「国際取引法務プログラム」がある。東京大学全体には「横断型教育プログラム」があり、学部生向けには2021年4月現在で7つのプログラムが存在する(詳しくは法務プログラム履修規程、横断型教育プログラム)。
演習と民法基礎演習は違う。前者は、各類で2単位あるいは4単位必修とされる授業で科目分類がないが、民法基礎演習は、2類のみ必修(かつ法務プログラム認定に必要)とされる授業で科目分類は実定法系である。
ポイント
特別講義の科目分類は意外と重要になるかもしれません。僕は2021年現在まだ履修したことがないので、その難易度などはわかりませんが。
基礎法学の特則は重要です。しかし、基礎法学14単位+自由な8単位で副領域表彰を狙う場合、(おそらく)14単位のうちの5割又は2/3の優以上が問われていて、8単位については関係ないので、結局好成績を収めなければならないことについての難しさはあまり解決しません。卒業要件に全く必要のない単位の履修を減らせる、というメリットは存在します。
各種認定制度は単なる自己満足に過ぎませんが、学習のモチベーションや履修上の目安にはなると思います。
法学部便覧全体に対する疑問や感想など
なぜ2021年Aセメスター開講の「特別講義 韓国法」は実定法系科目に分類されているのか。他の外国法は全て基礎法学系に分類されている。そもそも基礎法学系に分類される特別講義が少なすぎるので、特別講義において基礎法学系を減らしたい意図があるのか、それとも韓国法は日本の実定法に酷似しているから外国法としてみなさないというような事情があるのか。
成績表彰者規則2条の文言は改定したほうがいいと思う。演習とリサーチペイパーは立派な法学部開講の科目なのだから、「全て」ではなくなってしまっている。文言を改定しないなら、(何らかの条件を付けたとしても)演習とリサーチペイパーも科目分類すべきではないか。特に演習については、法科大学院進学プログラムにおいて「実定法分野の演習」なる分類が存在し、民法基礎演習と同等の扱いを受けているのだから、科目分類できないとは必ずしも言えないはずである(実定法分野の演習)。
授業は、15単位の授業時間をもって1単位とする(学部規則6条)ところ、私がこれらの履修制度について把握するのに要した時間は確実に15時間を超えている。よって、「学部便覧」の単位をもらってもいいと思っている(「授業」ではないので単位はもらえません、というツッコミは受け付けない)。
ポイント
ここにはポイントも何もありませんが、あえて言うなら、韓国法については問い合わせてみる価値があるかもしれませんね。東大は韓国を潜在的に日本のものだと思っているので、日本の実定法を扱う科目分類である実定法系に入れているのだ!というトンデモ主張ができるかも。
以上でおおよそ書きたいことはまとめたつもりです。「あの情報を忘れてた!」ということがあったら追記します。「これは間違っている」「これはどうなんだ」というご意見、ご感想や新たな情報提供があればお知らせください。勉強になります。
それでは~