微分積分席替え気分@東大

河合塾本郷校での浪人を経て東大に合格した文一生による、のんびりとした日常のブログ。

『変身』

今日は午前中雨がひどく、お散歩に行けないのが残念だと思っていましたが、午後からは嘘のように晴れ上がったおかげで散歩と青空を楽しめました。

 

さて、久しぶりの読書感想はカフカの『変身』です。以前カミュの『ペスト』について書いたときに、不条理文学の代表作の一つとしてあげていたはずです。実はあの時点ですでに読み始めており、1,2週間前には読み終えていたのですが、なんとなく感想をまとめるのが遅くなってしまいました。

 

それではこれまで同様に書いていきます。しかし、小説についていちいちTodoを書いているのもなんだか味気ないしそもそも難しい、ということで適宜カットしていきます。

 

・ビフォー

この本を手に取るきっかけは前述の通り『ペスト』を読んだことです。この本が不条理文学というジャンルに属するということ自体、もともとよく知りませんでした。読了後にそれを知って、そういうことなら同じジャンルの他の作品も読んでみようと思ったわけですね。

 

書名自体は知っていましたが、内容は全く知らなかったので、どのような不条理が作中で展開されていくのかを楽しみにしていました。変身、というくらいだから何かに変身する話かな、くらいですね。突拍子もない者に返信したり姿が変わったりする、という話で読んだことがあるといえば、安部公房の『壁』に収録されているいくつかの短編くらいなものでしょうか。あれはどれも、なんとも奇妙な雰囲気で物語が進展していく、不思議な短編集でした。

 

・気づき

※以下盛大なネタバレを含みます。見る前に読みたい、という方はここで一つ思いとどまっていただけると幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず端的に感じたことを言ってしまえば、不気味かつ不可思議な雰囲気が話全体を包んでいた、というところでしょうか。

 

いきなりの驚きは、主人公が虫になっているというと突発的な始まり方です。主人公は虫になったという現実を徐々に理解しつつも、まだ序盤においては、あくまで人間として、今後の生活をどうしていくかや現状をどう説明して急場をしのぐか、と対応していこうとする姿が描かれています。

 

話が進むに連れ、虫となった主人公とその家族との関係も描かれていくのですが、その関係性の変化が興味深いなと感じました。

 

両親は基本的に主人公たる息子を虫として扱う面が強く、そう簡単に関係を持とうとはしていない様子が描かれます。一方、妹は食事を与えたり虫としての兄の生態をある程度理解しているなど、この不条理に対応する姿を見せています。これは、同じ親を持つ子供としての立場上の親近感故か、はたまた若いがゆえの怖いもの知らずな麺故か、と考えました。

 

クライマックスの前のシーンとして、主人公一家の一室を間借りしていた同居人との話があります。ここで虫としての主人公が初めて家族以外の第三者の目に触れることになりますが、ここから一気に主人公の存在が否定されていきます。

 

はじめに虫となり、その外見や生態の特異さから家族との関係性は崩壊していくわけですが、更にここで第三者からの目線を意識するようになったことで、改めて虫と正常な関係を気づこうとすることの異常性を意識していったように感じました。

 

中身自体はそこまで変わらないと言っても良い主人公が、外見が大きく変容市、言葉も満足に伝わらなくなり、それにより家族に社会絡みたときの客観的異常さを感じさせたことで家族が崩壊する様子はゾッとします。

 

また、最後に主人公が死んだことによって家族が平成と幸せを取り戻す様子が書かれていて、それも切ないなと思いましたね。変身した兄という不条理が取り除かれたことで日常を回復するという意味ではわかりますが、家族が失われたことで良い方向に向かったというのは悲し買ったです。

 

そもそも変身の時点で、従来までの兄という存在橋を迎えていたと捉えれば、単なる不条理の排除と捉えられるとは思いますが。実際、主人公の妹などは、最後の場面でそれに近いような発言をしているとも取れます。

 

 

ということで『変身』でした。ガッツリネタバレの記事でしたが、もしまだ読んでいない方がいたらぜひ一度読むことをおすすめいたします。青空文庫にて無料公開されていますから、いつでもどこでも読めますしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは~